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2017年度運動方針(全日農第56回定期全国大会)

 

はじめに
 

 今ほど大変革・大変動の時代はない。世界の流れや日本の政治経済はどうなるのか。そして日本の農業・農村はどうなるのか。
 混迷の時代といわれる今こそ、我々の進むべき方向について意思統一し、力強く運動を前進させよう。

1.世界の動向

 イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ大統領の当選など、新自由主義的な潮流とは異なる動きが鮮明となっている。大企業優先の政治経済ではダメだという流れだ。しかし、民族主義的・国家主義的な様相も強まり、右傾化も進んでいる。
 一方、多国籍企業、金融資本、民族資本などは、国内外を問わず露骨な搾取と収奪を強めている。その結果、一層の格差拡大の社会を招くことが危惧されている。
 二度の世界大戦の反省の上に作られた世界貿易機関(WTO)による貿易ルールではなく、環太平洋経済連携協定(TPP)や、FTA・EPAなどの自由貿易協定は、支配層の権益を守るブロック経済圏や連合の形成であり、軍事的な安全保障体制と一体的に推進されている。
 資本主義と社会主義の対立ではなく、理念なき経済の衝突が渦巻く世界が強まろうとしている。

2.日本の動向

 日本にとってTPPは、中国の軍事・経済拡大に対するブロック圏の形成と、安保体制の経済的な基盤としても重要と考えられていた。しかし、トランプの登場により、TPP協定の発効は全く不透明となった。国内での成長戦略に破たんが見える中で、TPPが実現しないということになれば、安倍内閣の成長戦略は失敗に終わるだろう。
 こうしたなか、国内では、露骨な増税など税収対策の強化、産業構造の改革と称した破壊と再編が強められ、一層の負担を国民に強いることになる。年金や社会保障制度の改悪、消費税増税などが必至である。

3.TPPの動向と農業・農協解体攻撃

 TPP協定は漂流の可能性が高いにもかかわらず、TPPで進めようとしてきたものを、より強硬に進めることが予想される。
 特に、日本は国会で批准をしたことで、対外的にも国内的にも「日本はTPP水準のものは受け入れた」を前提として、日米FTAやEUとのEPA交渉のスタートラインに立たされることになる。
 もう一度、TPPの本質を考えてみたい。 第1点は、多国籍企業による世界の支配、ブロック経済圏と中国を仮想敵国とした安保体制の強化である。
 第2点は、国内的には、資本が求める規制緩和と、より強欲な収奪を行う体制の確立である。
 農畜産物の関税自由化問題もさることながら、TPPは、その外部的な圧力を利用し、国内ルールを変える大きな手段であった。TPPによる危機感や国際条約をテコに、国民生活のために必要とされてきた規制やルールを破壊し、資本の都合の良いようにつくりかえる手段として登場してきたのである。
 特に、資本・大企業の農業・農村への参入や、本格的な食料分野進出の障害となっていた農地法や農業委員会法、農協法などを、TPPという外圧をテコにして、規制を「改革」するものと捉えられてきた。
 だが、今やTPP協定の発効を待たず、農業・農村分野への企業進出等のため、すでに多くの制度の改訂や規制緩和が行われている。さらに、法律を改訂することもなく自由に振る舞える国家戦略特区を作って、企業の農地取得、外国人労働力の導入などに取り組み、全国への波及を狙っている。
 かつて民主党政権下で、戸別所得補償制度をはじめ、担い手育成、家族経営や環境対策も重視する食料・農業・農村基本政策が確立され、将来を見据えた農政の緒についたかに思えた。しかし自民党政権に代わり、農業改革という名の下で、小規模・家族経営や農業・農村を守るべき制度政策をことごとく否定し、企業重視の農業政策・産業政策一辺倒となっている。農業・農協改革の狙いもそこにある。悪あがきとも思われる成長戦略の行く末は、農業・農村・農協の破壊と、農村の富である農地、預貯金等の資金、文化的資産の資本による収奪や略奪でしかない。抵抗勢力とされるJAグループへの攻撃は、一層強まるに違いない。
 われわれはTPP協定の問題点を明らかにし、TPPの発効を許さない闘いを継続するとともに、企業による農業・農村市場や食・種子の支配の動きを警戒し、地域や現場での取り組みを進めなければならない。
 2017年は、重大な起点の年となる。財界・多国籍企業・外資による農業・食・農村市場への進出は、これまで守ってきたものを破壊し、奪うことになる。また、中山間地域等条件不利地域は放棄されかねない。先祖代々守ってきた歴史と伝統、そして土地と環境をどう守り次世代へとつなげていくか、正念場である。より深く状況を認識し、課題を明らかに、要求と闘い、取り組みを具体化していこう。
 

課題別の情勢

1.農地問題と政策

  農地問題では、規制改革会議が提案し、本質的には経済界の意図どおりに進められようとしている。「農地中間管理機構」の状況をみてみよう(左表)。
 2023年に担い手による農地利用が全農地の8割を目標として、毎年14万?の集積を実現するとしてきたが、2015年までの2年間の実績は14・3万?と、全国平均で目標の48%となっている。中間管理機構からの転貸先では、10万?のうち9万9千?が地域内の農業者(地元企業は1万4千?、地域外からの参入者は1万9千?、新規企業500?)となっている。
 従来の集落営農や認定農業者への集積が多く、100?以上の農地への参入を狙う企業経営は、現状では顕在化していない。しかし、米価の下落等による離農の促進、法人や認定農業者の整理統合、さらに企業による統合吸収もありうることから、充分な警戒が必要である。
 現在、遊休農地への課税強化と併せ、機構による所有者の同意を必要としない土地改良や灌漑排水事業の施工なども検討されている。大規模経営による生産性の向上においても、技術革新の一方で小規模・兼業農家等はますます経営が成りたたなくなり、離農を迫られる懸念がある。
 また、集落営農や小規模専業農家も、一層の生産性向上を求める低価格政策が強まれば、経営存続がさらに厳しくなることも危惧される。土地を資本に奪われることなく、真に地域の農業発展につながる集積となるよう取り組む必要がある。

2.米問題と政策

 現行の米価のナラシ対策は2004年に制定されたものだが、あくまで激変緩和対策である。米価はその後、生産費を大きく下回るまで下落してきた。
 民主党政権で、恒常的に生産費を下回っている部分への固定支払や、大きく下落した場合の変動支払で所得を補てんする戸別所得補償制度ができた。同時に、米と同等の所得を補償する位置づけで、飼料稲・飼料米に対する交付金制度が策定された。これらによって小規模生産農家も安心して生産でき、生産調整もスムーズに実施される方向となったが、自民党政権はこの制度を廃止し、一層の米価下落を招くナラシ対策のみに回帰した。
 その結果、米価が大幅に下落したにもかかわらず、何ら下支え対策はせず、飼料米増産への誘導という需給調整によって米価の維持を図ろうとしているが、それは米価を引き下げ、将来的な米の完全自由化に向けた条件整備である。TPP協定では米も関税撤廃の例外ではない。国会決議に反した強行採決は、その決意表明と受け止めざるを得ない。
 輸入米価格は60?3780円(アメリカの2016年/7月中粒種輸出価格)といった状況にある(上表)。売買同時入札(SBS)米の扱いにより、いつでも輸入米操作で米価下落が仕掛けられる制度となっている。
 SBS制度では、過去の輸入価格、費用を政府が押さえ、売渡価格を決めてきている。米の調整金が明るみに出て禁止した後は、商社や輸入業者、政府が差益をとってもSBS米の価格が下落している。枠の拡大やSBS米の制度の運用によって、米価の下落が図られることになる。
 飼料米の交付金水準は戸別所得補償制度のような政策の理論的根拠はなく、交付金はいつでも引下げうる。米価の低下に合わせ、飼料米の交付金の水準を下げてくるであろう。すでに財務省は削減を主張している。
 2018年から国は生産調整の責任を放棄する。国民の食料の安全保障から手を引き、農協等へ責任を転嫁しつつ、企業による米流通支配の強化をしようとしている。現在でも、国際競争力を旗印にしたコストダウンで、菓子等加工業界での業務用米価の引き下げが図られている。

3.農協問題と農協改革の本質

 規制改革推進会議による農協に対する攻撃は、まさに政府・財界の本質であり、全農の解体、もしくは資本・多国籍企業の傘下に組み込もうとするものだ。全農の購買事業の縮小、販売関係の流通関連企業の買収、生産資材関連部門の子会社の売却を主張し、これに背けば第2全農を設立すべきとまで言う。全農だけではなく、農協にも同様な姿勢を求めている。
 農協の信用事業については、準組合員問題を蒸し返しつつ、元締めの農林中金に対する攻撃を強め、3年後には信用事業を行う農協を半減せよと要求している。アフラックが郵便局を利用して事業展開しているように、財界やアメリカの狙いは、農協の経済事業や信用事業も、資本が参入して事業展開をする、または解体させて農業・農村市場を支配することにある。いずれにしても厳しい局面に立っている。農協組織が弱体化したり、資本のための組織として変質させられることになれば、農業や農業者は食い物にされてしまうであろう。
 財界の狙いは、農地を取得し、資産としての活用にある。資金運用がゼロ金利の時代にあって、投機対象や転用、地代相当の利回り等を狙うことも十分に考えられる。
 成長戦略として、農協から企業による事業展開へと構造変革を強める一方で、TPP以上の厳しいことが予想される日米FTA、さらに生産調整廃止による米価下落、その後の農地の流動化推進政策等を考えれば、抵抗勢力の一掃のため、今後もJAグループへの攻撃が強まることが考えられる。

4.酪農畜産問題と政策

 規制改革推進会議による農協に対する攻撃は、まさに政府・財界の本質であり、全農の解体、もしくは資本・多国籍企業の傘下に組み込もうとするものだ。全農の購買事業の縮小、販売関係の流通関連企業の買収、生産資材関連部門の子会社の売却を主張し、これに背けば第2全農を設立すべきとまで言う。全農だけではなく、農協にも同様な姿勢を求めている。
 農協の信用事業については、準組合員問題を蒸し返しつつ、元締めの農林中金に対する攻撃を強め、3年後には信用事業を行う農協を半減せよと要求している。アフラックが郵便局を利用して事業展開しているように、財界やアメリカの狙いは、農協の経済事業や信用事業も、資本が参入して事業展開をする、または解体させて農業・農村市場を支配することにある。いずれにしても厳しい局面に立っている。農協組織が弱体化したり、資本のための組織として変質させられることになれば、農業や農業者は食い物にされてしまうであろう。
 財界の狙いは、農地を取得し、資産としての活用にある。資金運用がゼロ金利の時代にあって、投機対象や転用、地代相当の利回り等を狙うことも十分に考えられる。
 成長戦略として、農協から企業による事業展開へと構造変革を強める一方で、TPP以上の厳しいことが予想される日米FTA、さらに生産調整廃止による米価下落、その後の農地の流動化推進政策等を考えれば、抵抗勢力の一掃のため、今後もJAグループへの攻撃が強まることが考えられる。

5.財界・政府の政策は…

 2016年11月、政府は「農業競争力強化プログラム」を打ち出した。特徴的な項目では、生産資材の民間活力の最大限利用による安定供給と価格引き下げ、肥料・農薬・機械・種子・飼料・医薬品の各種法制度の見直しと国際標準準拠による合理化・効率化、戦略物資である種子・育苗の品種開発や供給体制の構築への民間活力の最大限の活用などである。農畜産物の輸出については、全農は商社等と連携せよとして、商社の傘下への統合を狙っている。
 生産者から拠出額を徴収し、農産物の販売促進などを行うチェックオフは、法制化すれば全生産者から拠出金を強制徴収する制度であり、誰がどう使うかなどの問題も指摘されている。
 収入保険制度についても、災害だけでなく価格低下等も含め、収入が低下した場合の保険制度であるが、5年間の平均収入の9割を下回った場合に、その下回った額の9割を支払限度とし、さらに、保険料によって補償内容の選択肢を設けるとしている。しかし、対象者が限られるという問題や、基準収入があくまで過去の平均であり、生産費等の補償ではないこと、掛け金の金額、さらに法人の扱いなどの課題もある。所得補償方式や不足払制度などとの併用方式も検討する必要がある。。

6.農民が主体となった地域づくりを

 農業や農村の現場では、高齢化や担い手不足、耕作放棄地の拡大が広域的な問題となっている。これらはまさに政策の失敗による結果と言ってよいだろう。
 その一方、集落営農や新規就農者育成、新規移住者対策、地域活性化の取り組みなど、担い手やコミュニティづくりにつながる取り組みも進んできている。また、大都会に送るだけであったエネルギーも、地域内の潜在的価値を再確認し、自給の道も進んでいる。
 将来の課題を見据えつつ、農民が農業・地域を担う主体として、地域づくりをどのように取り組みむかが問われている。

 

具体的な闘いの方向

1.統一戦線作りと日常的な取り組みを

 これまで述べてきた情勢に対して、必要となるのは超党派での闘いだ。TPP協定の国会批准に対しては、農民組織だけでなく、農協役職員をはじめ、労働組合、消費者、医療関係、そして野党の超党派で、反TPPの集会やデモが各地で行われた。情報統制が凄まじい中で、TPPの本質を明らかにするとともに、今後の取り組み方向の意思統一をし、地域で日常的な活動を通じて、幅広い統一戦線を構築することが重要である。
 

2.あらゆるレベルで選挙闘争の連携を

 昨年の参議院選挙では、東北、北信越で野党統一候補が勝利した。これは農村の激しい怒りと運動が見事に結実した結果と言えよう。
 これまで行ってきた日常的な学習活動とあわせ、政策要求実現の取り組みをたゆまず行い、さらにそれらを政治的な運動へと高めていく必要がある。
 来るべき衆議院総選挙や地方議会選挙で、現在の農政の矛盾を明らかにし、政策転換への取り組みをどのように強めていくか、その真価が問われている。

3.地域の農業再建やコミュニティ再生

 TPPによる資本の狙いをしっかりと見抜き、地域・土地・暮しを守るため、反TPPの運動とともに、集落営農体制や、消費者との連携、農村のコミュニティの再生を図る事が重要になっている。
 同時に農村・農業の持つ力を発揮し、自然エネルギーを活用した発電や熱資源の「地産地消」を実現することが求められている。また高齢化が進むなかで、切り捨てられる地域の福祉をみんなで守る運動が必要になっている。

4.協同への攻撃には、共同の闘いを

 食と暮らしの安全・安定を軸に、消費者・生協等との連帯、協同組合間協同や共同事業を強化し、広範なネットワーク型の行動が問われている。
 産業界による種子や技術のグローバル支配が目論まれるなか、現場での営農と人々の暮しを守るため、企業による支配を許さない取り組みとともに、国民に食料を提供する誇りをもって、ともにがんばろう。

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