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2021年度運動方針(全日農第60回定期全国大会)

はじめに コロナ禍で一層重要になる食と農

 1958年3月に設立された全日本農民組合連合会は、今年60回の節目の定期大会を迎えることになった。

 全日農の誕生は、敗戦後の食糧難の時代、農地解放へ農民運動が高揚する中でのことであった。しかし、その後は一貫して農業切り捨て政策が続いた。農畜産物の市場開放や規制緩和・競争力強化の名のもとで、企業による農業・食料支配が進められてきた。

 一方、昨年から全世界的に広がる新型コロナウイルス感染が深刻になる中、人間の生存にとって欠かすことができない食と、それを支える農の重要性が再確認されるとともに、農的暮らしといった新たな価値も芽生えつつある。それにも関わらず、安倍政権の継承を掲げる菅内閣は、人々の命よりも経済を優先しようとしている。

 一層の厳しさが予想される局面で、全日農は、日本農業と農村、安心・安全な食料を守るために、引き継いできた農民運動の歴史に責任を持ち、2021年度の運動方針を確立していかなければならない。。

私たちをとりまく情勢とたたかい

1 貿易をめぐる動きと課題
 
 2018年12月に環太平洋経済連携協定(TPP11)が発効して以降、日本とヨーロッパ連合(EU)との経済連携協定(19年2月発効)、昨年1月発効の日米二国間の貿易協定と続き、さらに、昨年11月に東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)も合意署名が行なわれた。
 これら巨大な経済圏の貿易協定により、牛・豚肉をはじめ、輸入農畜産物が増加し、国内農業は壊滅的打撃を受けている。政府は、国内対策によって生産量や農家所得の減少はなく、自給率も維持されると強弁してきたが、すでにその詭弁は瓦解をしている。
 以下、それぞれの協定の現状と課題をまとめる。
 
(1) 日米貿易協定
 トランプ米大統領、安倍首相(当時)はともに、自らの政権維持のために決着を急いだが、その後、双方ともその地位を守ることのできない結末を迎えた。しかし、この協定により、日本では牛・豚肉を中心に輸入が増加し、特に牛肉の11月の輸入量は前年同月比で4割増となり、セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の発動基準に迫っている。
 当初、協定の発効から4ヶ月以内に次の交渉課題を協議することになっていたが、コロナ禍と米大統領選挙等の影響で協議は進んでいない。今後、バイデン新大統領のもとで、第2段階の本格的な貿易交渉を進めることになるか、あるいは米国のTPP復帰も模索されている。
 いずれにしても、コメを含む農産品も交渉が再燃する可能性は高く、食の安全や医療・医薬品、公共分野などで規制緩和やルール化が迫られる恐れがある。
 
(2) TPP11
 発効から3年目となり、オーストラリアやニュージーランドなど加盟国から日本への牛肉等の輸出が増加してきた。署名国のうち、まだチリ・ブルネイ・マレーシア・ペルーは国内承認手続きが行われず7か国の参加に留まっているが、タイや英国が参加に意欲を示していると言われている。
 一方、米国の復帰は当面無いとみられることから、日本は参加国に対し乳製品の低関税枠、牛肉などのSG発動基準の見直し・再交渉を求めるべきだが、見通しはたっていない。
 
(3) 日・EU経済連携協定
 チーズや豚肉の関税では、TPP協定以上の大幅譲歩をして発効した。英国のEU離脱にともない、日本は新たに英国とのEPA協定を結んだ。コメは関税削減・撤廃の対象外となっているが、5年後に再協議が行われるため、予断は許されない。
 
(4) 東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)
 東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国など15か国で合意署名が行われた。交渉に参加していたインドは、国民の反対が強いことから離脱した。それでも、RCEPは国内総生産(GDP)、人口ともに世界の3割を占める巨大な協定となる。
 農産物では米・牛肉・乳製品など日本の重要品目は関税撤廃・削減の対象外となったが、今後、再協議が行われこれらも対象になる可能性が高い。
 また、中国・韓国と初めて結ぶ貿易協定となり、今後は日中韓3か国の貿易交渉につながることも考えられる。政府は今年の通常国会での承認をめざしており、当面の取り組みが重要になっている。
 
2 貿易をめぐる動きと課題
 
 2020年の農林業センサスで、農業経営体は15年に比べ21.9%減少、特に個人経営体は22.6%減少する一方、法人経営体は13%増加した。販売農家と自給的農家を合わせた総農家数は174万7千戸(15年対比18.9%減)となり、ついに200万戸を割り込んだ。基幹的農業従事者も15年に比べ22.5%減少し、65歳以上の割合は69.8%で、平均年齢は67.8歳になった。
 農作物の延べ作付面積は田・畑合計で402万ヘクタール(19年)、耕地利用率も91.4%となり、いずれも過去最低を更新している。農業総産出額と農業所得は、ピークだった1984年頃に比べ7割程度の水準でしかなく、農業生産の基盤が急速に崩壊しつつある。
 
(1) 新たな「食料・農業・農村基本計画」
 5年ごとに見直しが行われてきた「基本計画」は、昨年3月に2030年を目標に閣議決定した。安倍農政のもとで規模拡大、効率化など産業政策に偏ってきたが、新計画では中小規模の農家を含めて幅広く支援し、生産基盤を強化する方針や、地域政策の重視も掲げている。
 食料自給率は、カロリーベースで30年度に45%とこれまでと同様としたが、飼料自給率を反映させない食料国産率を新たに導入し、目標を53%とした(現在46%)。そのうえで、飼料自給率は前回目標の40%から34%に低下させている。
 また、農業従事者は現在の168万人から30年は140万人に減少を見込み、農地面積も414万?への低下を想定している。しかし、すでに基幹的農業従事者は5年前に比べて40万人と過去最大の減少となっている。
 食料自給率の目標達成には、農業者や農地の維持・拡大への抜本的な政策転換が求められる。
 一方、農林水産物・食品の輸出額目標は5兆円(19年9121億円)としているが、必ずしも国内農産物の増加には結びついていない。
 
(2) 菅政権の誕生とコロナ禍の影響
 昨年9月に安倍晋三前首相が退陣し、菅義偉内閣が誕生した。菅政権は基本的には安倍農政改革を継承するとし、新自由主義的政策を進めようとしている。特に「規制改革の推進」を政策の柱に掲げ、企業の農地取得、農業参入の自由化、経営規模の拡大・効率化、中山間地農業の解体を進めようとしている。
 昨年初めから全世界的に拡大する新型コロナウイルス感染は、緊急事態宣言以降、外食や学校給食などの需要減少などにより、農畜産業にも大きな影響をもたらした。また、世界的にも、農業労働力の減少や物流の混乱、各国の輸出規制、国際的な食料価格上昇により、発展途上国を中心に食料危機が深刻になっている。
 
(3) 米価下落対策、畜産、中山間地域、種子を守る施策
 コロナ禍によりコメも業務用米の需要減少と適正量を上回る収量により、生産者米価は大幅に下落している。政府は来年の適正生産量を史上最低の693万トンとし、そのため過去最大規模の転作が必要だとしている。
 しかしこれは、政府が戸別所得補償制度を廃止し、生産調整の責任を放棄したことで、転作の柱の飼料米や大豆の作付けが減少し、主食用米の作付けが増加したことが原因である。さらに、不要なミニマムアクセス米を過大に輸入し続けていることにも問題がある。
 コロナ禍で需要が減少し、牛肉等の畜産物価格も大きく下落した。牛マルキン(肉用牛肥育経営安定対策事業)の拡充など、抜本的対策が求められている。
 多面的機能を有している中山間地域は、条件不利地問題や鳥獣被害などに直面している。直接支払制度の改善や定住対策を求めていく必要がある。
 18年4月に「主要農産物種子法」が廃止されたことを機に、公的機関の育種機能を維持するため、22道県で「種子条例」が制定された。今後も各県で条例化の推進が重要になっている。
 一方、開発された品種の海外流出防止など育成権者を保護するとして「種苗法」の改定が昨年12月の国会で可決・成立した。これまで農家に認められてきた登録品種の自家増殖は「許諾制」になり、農家の負担が増すばかりでなく、企業による種子の独占の危険性などが指摘されている。そのため自治体での「種苗条例」の制定運動が提起されている。
 
(4) 持続可能な農業・暮らしへの転換
 コロナ禍は、輸入に頼る不安定な食料需給や、格差が拡大し弱者にしわ寄せがいく不公平な社会構造などを明らかにした。こうした中で「大規模・集中・グローバル」から「小規模・分散・ローカル」へ、これまでの経済効率優先の在り方の見直しが迫られている。昨年5月以降、初めて東京都からの転出者が増え、地方移住や田園回帰、「半農半X」など多様なライフワーク、地産地消運動などが進んでいる。
 また、国連で2018年に採択された「小農の権利を守る宣言」や、19年からの「国連家族農業の10年」で、家族農業の果たす役割が再確認されている。さらに国連で15年に採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)でも、持続可能な農業推進がすべての国の目標とされた。
 いまこそ、農林水産業を資源循環型社会の基軸として位置づけ、それを評価することが重要となっている。

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