Home  »  活動紹介  »  2018年度運動方針(全日農第57回定期全国大会)

2018年度運動方針(全日農第57回定期全国大会)

 

はじめに
 

1.農業の未来はわれわれ自ら開く

 安保法制、共謀罪の強行採決、そして憲法改悪と、極めて右傾化する安倍政権。暴挙ともいえる「もりかけ」隠しの解散・総選挙であったが、今回の総選挙は、この安倍政権に対し、平和と民主主義、国民の暮しと生活、そして農業・農村を守るため、真の農政へと転換させる、まさに政治の流れを転換させる絶好のチャンスであった。
 農業・農民にとっても、規制改革・新自由主義のはびこる中で、企業中心の農業構造への変革を許すのか。それとも、もう一度、日本の風土に密着した家族経営を中心とした多様な担い手による日本農業へと舵を切るのか、問われるものであった。
 米政策、農協改革、TPP・RCEP等々の通商条約など、諸課題が待ちうける一方で、高齢化、耕作放棄地の拡大、農村の担い手の激減等、農業・農村の危機が深まっている中での選挙は、日本農業の将来を決する重要な局面にあった。
 選挙結果は、立憲民主党の躍進、東北地方など農村部で批判票がみられたものの、自民党を追い落とすまでにはならず、引き続き安倍農政を許す結果となったが、我々の置かれている状況は、我々自身が切り拓いていかなければならないことに変化はない。
 再度、全日農に結集する仲間は、情勢認識を意思統一するともに、地域の自立をめざす新たな農業・農村像を打ち立て、日本農業の未来を切り開く闘いを展開したい。

2.とりまく情勢を読み解く

(1)止まらないTPPの動き

 特徴的な情勢の第1点は、TPPは止まっていないことである。 アメリカ、トランプ大統領によるTPPからの離脱により、TPPが自国の国民にとって利益となるものではなく、グローバル企業の利益優先の条約であることが、世界に明らかになった。
 しかし、日本政府、グローバル企業や大資本は決して諦めてはいない。それどころか、TPP条約の国会での批准を背景に、既定路線として、利益確保と支配力強化のための取り組みを強め、11月11日、ベトナム・ダナンで新協定の大筋合意を取り付けた(※上)。
 アメリカ抜きのTPP11の動きもそうであるし、RCEPも東南アジア諸国との調和ある経済条約というよりも、日本が中心となって、TPPがダメならRCEPでの利権確保を図ろうとするものだ。東南アジア諸国の国民からみれば、日本こそが反省無く過去を繰り返す経済侵略者としか映らないという状況すら生じている。
 
(2)企業の利益を優先する法案
 
 国内に目を転じれば、昨年秋のTPP条約批准を踏まえ、競争力強化支援方策の確立がある。今年の通常国会では、TPP関連法案として、農業競争力強化支援法、種子法の廃止、農業機械化促進法廃止、土地改良法の一部改正、農村地域工業導入促進法の一部改正等を実施した。本来必要な規制を取り払い、企業の利益を優先するため、安価で安全・公平に農家へ種子の供給を国が都道府県に課す種子法や、農用機械の安全性の確保を保証をする農業機械化促進法の廃止を決めた。また、農地転用条件を緩め、企業が容易に農村へ進出するための農村地域工業導入促進法の改正を行い、さらに競争力強化支援法では農協組織の弱体化や企業・資本の系列化を促進しながら、企業が農業・農村へ進出する条件を整備するものとなっている。
 土地改良法の改正も、負担なしで基盤整備ができるようになったが、農民のためと考えたら大間違いである。これは優良農地の集積を図る手段であり、大型法人や企業への農地集積を促進し、将来的には企業がロボットやICT・AI等を使って、生産性の高い農業を展開するための条件整備である。
 農業災害補償法の改正により収入保険制度の導入も決まったが、170万人といわれる農業者のなかで、実際の対象となるのは20万人と言われている。さらに、制度自体についても、畜産のマルキン制度やナラシ対策(激変緩和対策だけで再生産を維持するものではない)と比較しても、十分な補償が得られる内容とはなっていない。
 TPPを前提とし、さらにTPPをテコとした国内農業の構造的改革・企業による農業・食料の支配への動きは、着々と条件整備がなされ、一層強まっているのである。
 
(3)グローバル化と企業の農地取得
 
 TPPの動きとともに、強まる国際競争、グローバル企業間競争の中で、一層国内農業への攻撃が強められ、企業の農業進出がドラスティックに厳しくなることに注意しなければならない。
 TPP11、RCEP、EUとのEPA大枠合意、そしてアメリカとのFTA交渉の浮上など、グローバル企業の熾烈な国際競争を背景に、強いグローバル企業の国際的な支配が進められよう。そのため、TPPの批准水準を土台とした一層の関税撤廃を伴いつつ、国際舞台を前提とした企業利益優先のルールが強められることが考えられる。
 そして、規制緩和、国境措置の撤廃、グローバル企業の自由な経済活動が前提となれば、将来的に想定されるのは日本の農地法の撤廃や外国資本の農地取得である。特に警戒すべきは農地の収奪だ。農地の価値を下落させ、一方で企業等への集積である。80?90年代のバブルの本質は土地への投機であったが、幸い農地法のおかげで農地は守られた。しかし今回は、規制緩和と日本経済の活性化を名目に、農地を投機対象(証券化)し、農村の財産を奪うことによって、日本の経済活性化の生贄にしかねない。ひいては、国民の財産が奪われることになる。それを声を大にして訴えなければならない。農地問題はいずれ重要な局面を迎える。
 農地法撤廃となると何が考えられるか。
 今や日本のグローバル企業や大資本は、農地を海外に開放する前に、生産から加工・流通・販売の垂直統合や、農畜産物の価格面での国際競争力を確保するための技術革新(ICT・AI・IOT・無人ロボット化など)を急速に進めている。それは企業に新たな投資分野・産業分野として、農業生産や農産物加工が位置付けられるものでもある。
 今進められている生産性の向上やコストダウンは農家のためと言えるものではない。農家より企業の利益確保のためであり、国際競争力確保であり、これがよりドラスティックに進められる危険性がある。
 
(4)生産調整廃止の意味するもの
 
 規制緩和によって生産性の高い農業や農地のみが重視され、そのための土地改良は進められるが、条件不利地域の水田は切り捨てられ耕作放棄地化する。そのうえ、所得補償的な社会的コストは削減されるばかりだ。
 来年度からの米の生産調整廃止は、国民の食料確保・安定的な生産と価格支持・安定供給といった政府の責任を放棄し、企業の自由競争・市場原理に委ねるものだ。各県の再生協議会に責任を取らせるという動きもあるが、それは政府の生産調整という政策があったからこそ機能していたことを忘れてはならない。国民に対する食料の安定供給という政策責任の放棄である。中期的には米価の下落を通じて、一層の兼業農家の離農促進であり、土地の流動化を招き、業務米等の米の輸入拡大、農地の剥奪、農業法人等の資本の系列化などが進みかねない。
 生産コスト3割減を目標として、飼料米の技術革新が進められているが、食用米についても応用され、連動したコストダウンが迫られかねない。特定銘柄や業務米等は残ろうが、総体的な価格低下の中で、家族経営や10?20?規模の農家が淘汰されかねない事態が懸念される。まさに、家族農業の危機、競争と淘汰、企業の傘下への組み入れなど、資本の論理が貫徹する企業的農業へのシフトのなかで、農地法が狙われてくる。
 
(5)利益至上の農業で地域は守れない
 
 企業的農業の重視、競争力強化による生産性重視の政策が進展すればどうなるか。
 中山間地域、特に条件不利地域の米作や農業生産は壊滅的な打撃を受ける。現在でも基幹的農業従事者は2010年の205万人が、2017年には151万人と26%もの減少だ。151万人の基幹的農業従事者も65歳以上が100万人と3分の2を占める。担い手はアッという間に減少していく。
 生産費を割る昨今の米価に何の手立ても講じられることなく進めば、耕作意欲は失われ、担い手の減少は一層加速する。集落営農等の法人化も、現在認定農業者24・6万経営体のうち、法人は2万体にすぎず、多くの市町村では認定農業者が大規模農業者として頑張っても、カバーしきれない懸念が強い。
 日本再興戦略として2013年6月の閣議決定では、2023年までに農地の8割を担い手に集積し、米の生産コストを4割削減、60?あたり全国平均16000円の価格を9600円に抑えるとしている。経営安定対策での補てんや補償もないままの平均米価9600円では暴落した2014年以上の大打撃が想定される。
 条件不利地域や担い手不足の地域での米の作付削減は、水田の耕作放棄地化だけでなく、代々守られてきた集落周辺の環境悪化も含めて、農村の疲弊を一層進めることになる。
 競争と利益至上主義の中でまかり通るのは淘汰と排除の論理だ。兼業農家、農村ga切り捨てられ、金にならないものは価値が無いとして排除される。地域に伝わってきた生産技術・食文化すら切り捨てられる。調和や循環、相互扶助、生産と暮しの繰り返す営みで大切にされていたものが崩されることなど座視できるか。
 これまでも全日農は規模拡大や構造政策に対して批判を展開してきたが、過去にないレベルで構造政策が展開されようとしているのである。
 

3.取り組みの基本方向を考える

(1)現場の課題を直視した取組みを

 農業農村分野での大きな課題は3つある。 ひとつは、農家への農畜産物の再生産価格をいかに補償するか、所得をいかに補償するか、という農畜産物価格・所得補償に係る課題だ。
 2つ目は、現在の高齢化・過疎化の中で条件不利地域を含めた農村での農業の担い手確保および環境保全や集落機能の維持の課題。
 3つ目は国民の食の安全と安定的な食の供給、すなわち食料自給率の向上と食料安保の課題である。 
 利益至上主義、企業の競争原理主義による農業・農村政策は、今後様々な局面で、一層大きなひずみを発生させることになろう。
 生産現場では、水田等土地利用型作物、畑作、酪農畜産、果樹、各分野での価格・所得問題の課題。兼業、専業、そして集落営農法人や、農業経営体の経営破たんの課題。取引価格や流通上での大手小売資本の支配なども問題となる。
 また、農地の荒廃や企業による占有・取得・証券化(土地ころがし)、集落の崩壊や環境破壊など、地域が直面する課題もより深刻とならざるを得ない。
 政策要求を行いながら、現場の課題を直視し、現場・地域から自立的に解決にむけて取り組む姿勢を堅持、生き延び、力を蓄え、連帯しよう。地域から、地域との連帯から、日本の食料・農業・農村政策を変えていく方向で臨もう。自らの暮しは、自らが仲間と共同して、また連帯して創り上げていくという姿勢で臨みたい。
 農業・農村が、社会にとって、人間の暮しにとって、どれほどかけがえのないものか、その社会的な役割(準公共的な役割)を国民共通の認識にしなければならない。農民も、農業・農村の誇りと自信を取り戻すことだ。そのために、広範な地域での取り組み・闘いを進めていきたい。
 
(2)自立し生き延び、次に繋ぐ闘いを
 
 条件不利地域を含め、農山村の環境を守りつつ、営農を続け、国民の食を賄ってきた主力は、兼業を含めた農業者、主に家族経営と集落での共同体的なつながりによるものである。村落共同体として、水田地帯特有の生産様式が、集落など社会の人間関係を形成してきた。
 食べる行為は生きるための基本である。われわれは食を作り出す営みを通じて、自然に働きかけ、環境・自然を大切にし、自然と人の関係を紡ぎ、風土を育ててきた。そこに、自然と共生する世界観や価値観が生まれ、日本の原風景や祭りなどの文化も形成されてきたのではないか。
 農業は、国土の保全、水資源の確保、生物多様性の維持など多面的な機能を備えている。農産物の供給はもちろん、食文化への貢献、地域社会の存続、教育・文化への影響など、経済的な貢献のみでなく、社会的、文化的にも、多くの活動の基礎となっている。
 農山村が農業を土台に存在するからこそ、そうした機能もまた人々の手によって守られてきたのである。「農は国の基」。農村が崩壊するとき、それは都市の崩壊、日本社会の基礎をも揺るがすことになろう。
 世界的な情勢を含め、現代社会が不安定、脆弱になっている。都市部の生活も安定していない。止まることの無い都市部の高齢化や貧困化は、農村や地方に目が向き、農村回帰の動きが一層強まるのではないだろうか。競争に疲れた若者も安らぎを求めてやって来るのではないか。農山村を再び蘇らせよう。単に守るのでなく、日本の社会・経済の揺らぎ、都市の貧困化への対応手段として、受け入れ態勢の整備を含め、何としても取り組むべき課題である。農業・農村の歴史的・社会的な役割と、取り組む意義をしっかり認識しておきたい。
 

このページのトップへ